一般社団法人 日本POPサミット協会
安達昌人会長
明けましておめでとうございます。
会員の皆様には、すこやかに新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
一般社団法人 日本POPサミット協会は、昨年8月1日をもって第14期を迎えました。
新型コロナの状況も小康を得て、社会全体の活動もほぼ通常に戻り、当協会も昨年は、第23回「サミット(全国大会)」の実施、会報誌《新年号、春号、夏号》の発行、会員向け勉強会の開催、各界へのセミナー講師派遣など、順調に事業の進展を見ることが出来ました。
特に「サミット」は、国立市旭通り商店街とのコラボ事業を実施し、会員の一致協力によって、希望店16店の手描きPOP広告を作成するなど、実りある年となりました。
片や、社会の情勢を見ると、大規模な震災・水害による多大な被害、極端な猛暑による農産物の不作、それらの環境異変の影響による物価の高騰、異常な犯罪の発生、さらに、海外の絶えることの無い戦争の悲劇など、人々の日常生活に暗い影を落としています。
ただ、パリオリンピックでの日本選手のメダル獲得や、メジャーリーグでの日本選手の活躍など、人々を勇気づける明るい話題も見られました。
さて、こうした状況にあって、今期の「事業計画」で、運営方針として「アクティブに邁進したい」と述べましたが、「アクティブ(active)」とは、活動的・積極的という意味であり、今や「自ら進んで盛んに働きかける」と、より明確化されて使われている言葉です。
そして、パリパラリンピック選手団の田口亜希団長の挨拶から《「勇気」「強い意志」「インスピレーション」「公平」の精神で臨む⦆といった言葉を紹介しました。まさにアクティブのキーワードと言えます。
「勇気」と言えば、チャップリンの後期の映画「ライムライト」で、足が麻痺して踊れなくなり、生きる気力を無くしたバレリーナを励ます言葉が有名です。
「All you need in life is courage, imagination, and a little bit of money. That's all.(人生に必要なのは、勇気と、イマジネーションと、少しばかりのお金だけだ))」。
さらに、傷心のバレリーナへの激励として、次の言葉があります。
「You're not thinking. You're feeling. You must do things with your heart.(くよくよと考えてはいけない、感じることだ。何事も心を込めてやらなくては)」。こうして、バレリーナは立ちあがります。
折しも、以前に協会の会員だった奥村加世詔さんから、便りが届きました。
これまでの事務所を閉鎖・改装し(築50年の木造家屋)、昨年11月に 「こども・シニア食堂」をオープンしたという報告です。その計画に当たり「クラウドファンディング」を実施し、調達した資金を改装費の一部にしたとのこと(当協会でも少額支援しました)。
「こども・シニア食堂」はこれまで温めていた計画だったのでしょう。第1回は多くの参加者があり、順調にスタートを切ったとは誠に嬉しいことです。
人生最終章として体の続く限り頑張って、子ども・シニアの食をサポートしていきたいと、抱負を述べています。奥村さんはもともと頑張り屋ですが、夢を実現すべく、着実に実行していく姿勢は立派だと感嘆し、まさにアクティブな活動だと考えます。
今や、生成AIが流通業界の主要な課題で、「ChatGPT」や「Copilot」は、その最も身近なAIアシスタントです。ChatGPTは一般的で幅広く、MicrosoftのCopilotはビジネス的と言われます。自分は、定期的にデータを更新するというCopilotの方を良く活用します。
例えば最近、業界誌に寄稿した原稿が「である調」であったものを、もう少しソフトにするため「です調」にしてくれるようにCopilotにプロンプト(指示)したところ、一瞬にして文体を変更してくれました。そのままでも使える自然な文章です。
このように、きわめて重宝なツールであることから、今やどの企業にあっても、従業員に生成AIの手法を取り入れ、自分なりに活かして成果に結びつけるよう勧告しています。
確かに要領の良い有効なデジタルの活用と言えます。ただし、この流れは、世の中に器用人ばかりを生み出していくような危惧も感じます。人間にとって大切な「イマジネーション」能力を失って行くのではないだろうか。イマジネーションは「想像力」であり、「創造力」の源泉となるものです。
私たちは、今後、ITの先進性や技法を吸収しながら、それ以上に、イマジネーションやクリイティブな感覚を重視して、活動していきたいと願うものです。
先のキーワードの「公平」の精神については、今や「公平」が犯されているのをよく見かける世相です。
昨年は「カスハラ(カスタマー・ハラスメント)」の言葉が目に付きました。実に不快な言葉です。購入した商品に対して過剰なアフターケアを執拗に求めたり、接客した従業員に過酷な言動をとることですが、人は誰でも公平であるべきです。特別な優越性を持って人を見下す、いじめるという行為は、人間の持つ悲しい一面です。
東京都が昨年、いち早くカスハラのガイドラインを公表し、本年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行するのは、たいそう良い政策だと考えます。
一方、カスタマーに関連する言葉として「サイレント・カスタマー」があります。「サイレント・クレーマー」とも呼ばれ、カスハラとは対蹠的な存在です。
すなわち、製品やサービスに不満を抱いていても、その苦情を企業(小売店も)に伝ことなく離れていく顧客のことです。何故言わないのかといえば、「言いづらさ」や「面倒くささ」が挙げられます。この声なき不満を持つ「サイレント・カスタマー」は、ビジネスに深刻なダメージを与えるものとされます。
特にSNSが普及した今日にあっては、この不満をオンラインで共有することで、他の潜在顧客にも影響を与えることになります。
私たちも、POP広告を主要な事業とするサービス業です。仕事先から直接「カスハラ」を受ける例は少ないですが、不満を持つサイレント・カスタマー(仕事先)の存在を知ることは、なかなか難しいことです。
これまで、当協会では、ひたすら誠実に仕事を続けてきていますが、今後もいっそう心を込めて、事業に取り組んで行くことを願うものです。
事業を運営していく上で、今一つ重要なのは「サイバー対策」です。
昨年は、ANAやJALなどの航空会社がサイバー攻撃を受け、欠航・遅延の大混乱が生じたことは、目新しいところです。サイバー攻撃は、こうした大手企業ばかりでなく、中小企業にも及びます。デジタル社会にあって、その脅威はいっそう加速しているようです。
もし自分たちが被害を受けた場合には、自分たちのパソコンなどの機器が踏み台になって、関連する企業にも損失を与えるなど、重大なリスクが発生すると言われます。
では、私たちの協会として、どう対処すべきかは模索中ですが、現時点では、セキュリティのさらなる強化、不審なメールやネット検索には関わらない、重要なファイルは定期的にバックアップ、などの対策法が挙げられるようです。
協会では、十分な注意を配慮しますが、会員の皆様も常にセキュリティを更新し、ハッキング、フィッシング、ランサムウェアなどといったサイバー攻撃に、個々に対策を強化して、安全・安心な活動を願うものです。
以上、いろいろな観点で所見の一端を述べましたが、新しい年を迎えて、協会もさらにいっそうの進展を目指したいと願いますので、どうぞ会員皆様のご賛同とご協力をよろしくお願い申し上げる次第です。
令和6年(2024年)5月23日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
一年中でもっとも爽快とされる時候、皆様には元気にお過ごしのことと思います。
今回は、「広告」の功罪をテーマに、書いてみることにします。
私たちの生活の周囲にはさまざまな広告が溢れ、また、私たち自身も広告に関わる仕事に携わっています。広告は、社会生活活動の重要な一端を担っています。
さて、広告の功罪については、いくつかの観点から論議されていますが、
まず、「功(メリット)」を挙げれば、
では、「罪(デメリット)」を挙げれば、これはきわめて複雑で多様な状況です。
以上、広告の功罪を見てみましたが、「功」よりも「罪」の露出度が顕著になっていることは確かであり、それが今日の情況でしょう。
かつては、マスコミを中心に一方的に流れていた広告が、今は誰もが発信し自在に加工出来るデジタル媒体によって、多様な面を持つようになっています。犯罪的な意図の広告もあるとともに、規制を緩和されたごく日常的な広告が、弊害をもたらすことも起こり得ます。
では、私たちPOP広告クリエイターは、広告に関してどう対応すべきなのか。
例えば、ある企業商品のPOP広告を作成する際には、そこに訴えている文言を鵜呑みにすることなく、客観的な判断力により、その商品について十分に調べた上で、購入する消費者に本当に役立つ情報を表現することが肝要です。文案も誇大にならぬよう注意します。
当然のことながら、有用な情報を、いかに適切な文案でメッセージするかは、限りなく難しい事項であり、私たちの今後の大きな課題になってくるものと言えます。
以上
令和6年(2024年)1月1日
一般社団法人 日本POPサミット協会
会長 安達昌人
明けましておめでとうございます。
会員の皆様には、つつがなく新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
一般社団法人 日本POPサミット協会は、昨年8月1日をもって第13期を迎えました。
新型コロナの感染状況もようやく小康を得て、社会全体の活動も息を吹き返し、当協会も昨年は、「第22回サミット(全国大会)」の実施、会報誌《新春号、夏号》の発行、各界へのセミナー講師派遣など、好ましい事業の成果を見ることが出来ました。
特に「サミット」は、親子をターゲットにした地域密着の新しいタイプの催しとなり、併せて、商店の人達対象のブラックボード講習会も実施できて、実りある年となりました。
片や、世界の情勢を見ると、他国に侵入して民衆の生活を破壊する激烈な戦闘が各地で相次ぎ、それによって物流も阻害され、また自然環境の破壊による農・海産物の不作など、日本はもとより世界の人々の日常生活に著しい影響が出ている現状です。
では何故、戦争を起こすのかと言えば、自国の富を増大させる、そのために領土を拡大する、また人種的・宗教的な差別感で相手を蔑視する、などの傲慢な意識によって、共存共栄を保ってきた均衡が崩れ、昔の戦国時代と同じ様相を呈しているのです。
良寛の和歌に「いかなるが/苦しきものと/問ふならば/人を隔(へだう)る/心と答へよ(世の中で何が一番見苦しく悲しいものかと聞かれたら、それは人を分け隔てする心だと答えなさい)」という作品があります。自国ファースト、自分ファーストという勝ち組的な競争原理の通用する世界は、人間にとって最も大切な絆を壊してしまうのでしょう。
ところで、昨年11月に、ビートルズの最後の新曲として「NOW AND THEN(ナウ・アンド・ゼン)」が日本と世界で同時発売され、話題になりました。ジョン・レノンが自宅で録音したというバラードのラブソングですが、雑音を取り除き、ポール・マッカートニーなどの旧メンバーを参加させるという、最新のAIの技術で完成させたコレクションとのことです。
これを機に、ジョン・レノン、またビートルズの人気が再燃しています。
ジョン・レノンの「ギブ・ピース・ア・チャンス(平和を我等に)」は、かつてベトナム戦争への反戦歌としても歌われた代表作ですが、ガザ地区爆撃に反対するニューヨークでの集会で歌われている風景が、テレビで報道されていました。時空を超えた平和のアピールです。先ずは、一刻も早い戦争の終結が望まれるものです。
さて、今日の経営戦略の主流が、生成AIの技術に負うところが大であることは、誰もが認めるところです。デジタル化にいっそうの拍車がかかることでしょう。
私も、iPadにインストールした「ChatGPT」に質問してみました。
問い:「私達はPOP広告の作成及び指導を事業とする一般社団法人です。新年に当たり、会員を奮起激励する文句を、3例ほど挙げてくれませんか?」
すると、例によって「もちろんです」という言葉の後に、
1,「新しい年、新たな飛躍の始まり。一緒に未来をPOPに彩りましょう!」
2,「POPの力でビジョンを共有し、一緒に成長する素晴らしい年にしましょう。」
3,「結束力ある仲間たちとともに、2024年をPOPな成功へのステップとしましょう!」
と、すぐさま答えてくれました。いずれも優等生的な回答で、参考にはなると思います。
手元に届いた業界誌や会報に、各界の代表者の新年の抱負が述べられていますが、かつての「躍進」「挑戦」などの高らかに訴える文言は影を薄め、「確実に歩む」「堅実な進展」「停滞から成長へ」などの言葉が目に入ります。
確かに、私たちも常に「停滞から脱却し、着実に進展する」ことは大切だと言えます。
ただし、デジタル重視のみの戦略には、問題が残ると考えます。
例えば、東京都の小池知事が、昨年末に、子育て支援の一環として、来年度の「高校授業料の無償化」を表明したのに対して、タレントで事業家のH氏が自身のYouTubeチャンネルで、「この方策は愚策である」「Googleや生成AIが主流の時代において、高校では遅れた内容を教えている」と痛烈に批判して、賛同する人もいたようです。
高校授業料の無償化の賛否はともかく、H氏の発言はデジタル偏重の勝ち組優先の主張だと思います。基礎的な知識や思考を身に付けることで、心の豊かさが生まれ、共に学び競う共同学習によって、大人として人間の絆の大切さも身に付くものと思われます。
ちなみに、昨年のNHK大河ドラマの「どうする家康」は、絆を重視するコンセプトが底流にある物語です。主人公の徳川家康は、これまでに登場した英雄と違って、優柔不断で弱気な人物像が異色でした。家康は織田信長や秀吉とは異なるパーソナリティで、誰をも公平に扱う人間的な絆を深めて、様々な個性の家臣の助力に支えられ、他の武将が果たせなかった自己の戦略を成就し、幸運な生涯を送ることになります。
今や「デジタル化」重視の風潮にあって、その対極にある「アナログ」が軽視されがちです。これば「アナログ」が「アナクロニズム(時代遅れ)」と混用され、デジタルに対比して、古い時代のもの、古い手法と誤って解釈されるためです。正しくは、データの連続的な変化を物理量で表わすのが「アナログ」であり、「デジタル」は連続的な量を段階的に切って数字で表すことを指す言葉です。人間の手によるクリエイティブ作業など「アナログ」でなければ出来ない重要なものも数多いのです。
私たちは、デジタルを取り入れながら、アナログの感性も大切にするという両輪を踏まえて活動していきたいと望みます。
そして、今日の進路の要とされているのが、SDGs(エス・ディー・ジーズ=持続可能な開発目標)であり、それを基盤としたDX(デジタル・トランスフォーメーション)です。
SDGsは、発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
この目標達成のためには、デジタル化とともに、アナログ的感性も重視されています。
ということで、英文に「We are steadily making progress. (私たちは着実に前に進んでいく)」という格言がありますが、私たちの日本POPサミット協会も、本年は「常に前向きに、堅実な進展」を指針として、POP広告を主軸とした販売促進活動を基に、売りの現場で、また教育指導などあらゆる場にあって、着実な事業活動を図りたいと願います。作品の制作や教育において、商品情報を書き込む際には、サスティナブルな理念に基いて訴えることを大切にしたいものです。「ウエルビーイング (Well-being):誰にとっても本質的に価値ある状態、その人の自己利益にかなうものを実現した状態)」を、誰もが得ることが出来る良き商業環境づくりへの情報提供が、POP広告の果たすべき役目だと言えます。
新しい年を迎えて、協会もさらにいっそうの発展を目指したいと願いますので、どうぞ会員皆様のご賛同とご協力をよろしくお願い申し上げる次第です。
令和5年(2023年)6月15日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
季節の移り変わりが足早ですが、皆さん方には、お元気にご活動のことと推察します。
さて、スポーツのビッグイベントの話題としては、今年の3月22日に「2023 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」で、侍ジャパンが決勝戦でアメリカを下して優勝し、喜びのニュースは長期間に及びました。大谷翔平ブームは今もいっそう盛んです。
昨年の11月~12月には、「FIFAワールドカップ2022」がサッカーファンを熱狂させました。日本は対コスタリカ戦で敗退しましたが、その時、森保一監督が選手たちにかけた励ましの言葉の一節が、注目されました。
「過去は変えられないが、未来は変えられる」、つまり先を目指して奮起しようというもの。
この言葉は、正確には「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる(You cannot change others or the past. You can change yourself and the future.)」 といった文言の引用で、カナダの精神科医エリック・バーン(Eric Berne)の名言とされるものです。⦅エリック・バーン著「人生脚本のすべて」(星和書店)⦆
他人とは、相手に対して変わるためのキッカケを作ったり、背中を押してあげることは出来るが、最終的にはその本人がどう判断し、どう行動するかという問題で、だから、他人を変えることは出来ない。
自分が変わるのは、すべて自分自身の問題なので、意識的に自分を変えることができる。未来も同様に、自分自身の努力しだいで変えることが出来るというものです。
というわけで、自分が今のまま何もしなかった場合は、何もしなかった未来が訪れ、何か大きな変化を起こした場合は、未来も変わるということになります。
以上が、エリック・バーンの言わんとしている、誰にでも納得できる理論です。
しかし、自分を変えるということは、実際には、それほど簡単ではないでしょう。
そのヒントの一つは、まず「今いる環境をガラッと変えると、自分を変えられることができる」というもの。環境を変えれば、新しい課題にぶつかる、出会う人も変わる、そして新たな発見が生まれて、新たな考え方が出来る。そうすると、新たな行動を起こせ、行動が変わっていけば、新たな結果が生まれる、ということです。なぁ~だ、と思われるような、しごく当たり前のヒントです。
大切なのは自分自身が変わることを決意して、環境を変え「新しいことをする」。つまり、知らないことに挑戦することの重要さを説いていると言えます。
とは言え、会員の皆さんには、すでにもう、いろいろと新しいことに挑戦されているのではないでしょうか。環境をガッラと変えるかどうかはともかく、例えばIT関連の新しい技法を学んだり、身近な園芸に取り組んだり、楽器をマスターすべく教室に通ったりと、それなりに「自分磨き」をされていると思います。
私事で恐縮ですが、今の自分にもう未来はないことを心得てはいるものの、やはり自分を変えるべき、というささやかな願望で、最近、「英会話セット」をネット購入してパソコンに取り入れました。今さら英会話と言ったところですが、実は「英語」の教職員免許証を持っていながら、ヒヤリングは苦手。アメリカに旅行した時、帰る頃にようやく、現地の人達の話を少し聞き取ることが出来た程度です。
訪日する欧米の人達と話して、その地の事情を知りたいと思います。そして、可能ならば、オーストラリアに旅行してみたいとも願います。
何故、オーストラリアなのか。「SDGs報告書2022版」(毎年6月に発表)の達成度ランキングで、オーストラリアは6位とかなり高いためです。オーストラリアは、達成項目の中で「14:海の生物多様性」「15:陸の生物多様性」の面で、優位にあるようです(ちなみに達成度で1位~3位は、北欧のフィンランド、スウエーデン、デンマーク。一方、日本は19位と低いランク)。生存多様性に優れ、比較的訪れやすいオーストラリアの自然環境に触れてみたいものです。
今一つは、「エシカル消費」を自分の新しい課題に出来ないか、ということです。
皆さんは「エシカル消費」のことをご存じですか?
「エシカル(Ethical)」は「倫理的な」という意味で、気候変動や人権損害などの社会問題を考えながら、モノを買ったりすることです。
気候変動については、例えば、2022年にパキスタンで発生した大洪水により、国の3分の1が水没し、1700人以上が亡くなっているように、世界の気象災害は過去50年間で5倍に増加していると言われます。
国連気候変動に関する政府間パネル(JPCC)は、「人間活動が地球を温暖化させてきたことは、疑う余地がない」としています。
生物多様性も危機的状況です。環境NGOのWWF(世界自然保護基金)は、1970年と比べると、生物多様性は約70%も減少していると報告しています。
人権面での課題も重大です。世界の子どもの10人に1人が児童労働に従事していて、カカオやコットンなどの生産で、かなりの過剰な児童労働が行われているようです。私たちに身近なチョコレートや衣服は、子供たちの労働に支えられているのかもしれません。《以上は「エシカル白書2022~2023」より》
こうした課題に対して、消費者が出来ることは、人権、社会、地球環境に配慮した商品やサービスを選ぶこと、すなわち、目の前の商品がどのように作られ、自分は何を選んでどう使うか、モノの過去・現在・未来を考えての選択が「エシカル消費」とされます。
ただし、「エシカル消費」は幅広い分野にわたるため、何から始めればよいかは難しいところ。身近なものとして「認証ラベル・マーク」は、その基準の一つとされます。
途上国の人権に配慮した「国際フェアトレード認証」や、水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた証しであるMSC「海のエコラベル」、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らない「有機JASマーク」、社会・経済・環境(持続可能性の3つの柱)の強化につながる手法で生産された「レインフォレスト・アライアンス認証」、正しく管理された森林から生産された林産物の使用に関わる「FSC認証」、オーガニックコットンの世界基準により日本で製造されたことを示す「JOCA会員ラベル」などがそれに当たります。
認証ラベル・マークのいろいろ
国際フェアトレード認識ラベル
MSC海のエコラベル
有機JASマーク
レインフォレスト・アライアンス認証
FSC認証
JOCA日本会員ラベル
さらに、エシカルな暮らしのルールとして「7R」も提唱されています(一般社団法人エシカル協会資料より)。すでに、おなじみの言葉も多いと思います。
●Rethink=今必要か、買う前に立ち止まって考える
●Refuse=ポリ袋など、不用のものを断る
●Reduce=使うものを減らす
●Repair=修理して長く使う
●Reuse=再使用・再利用する
●Repurpose=別のものとして再生する
●Recycle=再資源化する
私たちはこれまで、POP広告を指導したり作成する際に、消費者のベネフィットを重点としていますが、いずれにせよ、商品の購買を促すツールとして取り組んできました。
しかし、今日の状況にあって、それだけで良いのか。
モノを買う消費者にさらに賢明になってもらい、エシカルな感覚で品選びをしてもらうことが大切です。「買物は投票」という言葉がありますが、消費は商品を作り出す企業に対する意思表示とも言われます。賢い消費者が求めていることを知れば、企業もよりエシカルな商品・サービスを提供することになるでしょう。
今や日本では、デジタルな手法も含めて、経済の活発化が進められています。その状況にあって、販売促進とは違う観点に立つ「エシカル消費」の理念を、POP広告でどう表現するかは、実に難しい課題です。皆さんも、一緒に考えていただけませんか。
以上、今回は「自分を変える」と「新しいことへの取り組み」の2点について述べてみました。皆さん方のいっそうのご活躍を期待いたします。
令和5年(2023年)1月5日
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
明けましておめでとうございます。皆さん方には、お元気に新年を迎えられたこととお喜び申し上げます。
さて、今年の干支は「兎」ですが、今回は兎にちなんだ文章を綴ってみようと思います。
まず、干支の「卯」や「兎」の字体は、象形文字から転化したものと言われます。
「卯」は「同形のものを左右対称」に置いた象形で、同価値のものを交換する、左右に開いた門から入る、草木の芽吹きなどが想定され、十二支の第四位、兎の意味も表すようです。
「兎」はそのままウサギの象形で、今の文字からも想像できます。ぴょんと跳びはねるような姿態がイメージされます。
また、兎の数え方は一匹ではなく、一羽と数えます。一羽と数える由来は諸説ありますが、獣肉を食べることに宗教的な忌避感があった日本では、鳥の仲間だから食べて良いと、こじつけて呼んだという説が有力です。
日本ではこれまで、日常的に兎肉はあまり食用としませんが、フランス料理などでは人気の食材です。しかし、昔は日本でも食べていて、他にイノシシ肉などは「山鯨」と魚に譬えた隠語に変え、精が付く貴重な動物性タンパク質源としたようです。
ただし、今や人気のジビエでは、イノシシ、シカ、熊、そしてウサギと種類は豊富です。
兎が出てくる誰もが知る物語といえば「うさぎと亀」。実はイソップの寓話が元のようです。うさぎと亀が山の頂上を目指して競争しますが、途中でうさぎが居眠りしたため、亀が先にゴールして勝利を収めるという話。「どれだけ自分の能力に自信があっても、油断せずに物事に取り組むことが重要」という教訓です。
怖い話としては、おとぎ話の「かちかち山」。ある所にお爺さんとお婆さんが住んでいて、タヌキが畑でいたずらを繰り返すので、お爺さんがタヌキを捕獲して、「タヌキ汁」にしようとお婆さんに話します。お爺さんが出かけたすきに、タヌキはお婆さんをだまして殺し、「ばばあ汁」に料理してお爺さんをだまして食べさせます。ホラー映画もどきです。
相談を受けたウサギは復讐を企てます。ウサギはタヌキを芝刈りに誘い、背負った芝に後ろからボウボウと火を付けます。やけどを負ったタヌキに、唐辛子入りの味噌を薬だと言って背中に塗り、タヌキは痛みで苦しみます。さらに、ウサギはタヌキを漁に誘い、泥船に乗せて溺れさせます。助けを求めるタヌキをウサギは艪で沈めて溺死させ、復讐を果たします。
勧善懲悪のおとぎ話としては、あまりに残酷なストーリーです。一思いに成敗するのではなく、じわじわと陰湿なハラスメントによる懲罰です。
何故、タヌキはウサギを信頼し、疑わなかったのか。太宰治の小説「お伽草子」の中の「カチカチ山」では、タヌキがウサギに徹頭徹尾、惚れていたのだという、中年男の美少女への恋物語として描き、愚鈍なタヌキに心から同情しています。
この物語には、報復の連鎖が見られます。まず、生活を脅かすほどの被害でもないのに、爺さんがタヌキの命を奪い、食べてしまうという報復手段に出ますが、それが裏目に出て、最愛のお婆さんを失うばかりではなく、食べてしまうという残酷な悲劇を生み出します。
タヌキはお爺さんの意を受けたウサギの報復を受けることになります。もしも、お爺さんがタヌキを諭すだけにしていたら、このような報復の連鎖は生まれなかったでしょう。
この物語は、地球上から戦争がなくならない人間の社会を連想させます。戦争に使われる武器は、刀剣・弓矢から鉄砲、大砲、毒ガス、原爆へと次第に巨大化・狂暴化していきます。
ところで、兎は今やペットとして飼われますが、昔は畑に害を及ぼす野兎として見られたのでしょう。可愛いというより、ちょっと狡い動物とされています。
その物語が「因幡(いなば)の白兎」。「大国主命」という神様の国づくりにまつわる話の一部で、古事記にも描かれています。隠岐の島に住む兎が、因幡の国に渡るためにワニザメをだましてずらっと並ばせ、背中の上を渡って成功。しかし、いざ降り立とうという時に「お前たちは騙されたのさ」とからかったために、怒ったワニザメに毛皮をはぎ取られ、丸裸にされてしまう。通りかかった「八十神」といういたずら好きな兄弟の神様に「海水を浴びて、風と日光を浴びれば治る」と教えられ、その通りにして痛みはひどくなる一方です。
そこへ大国主命がやって来る。泣いている兎に「 真水で洗って、蒲(がま)の穂をつけておきなさい」と教えられ、するとたちまち傷が癒えて、毛も元通りになるという話です。
この神話の教え諭すところは、「不正直への戒め」と「思いやりの心を持っていれば、幸せな結末が待っている」ということでしょう。昔の説話には、常に教訓が伴うものです。
私事ですが、昔、経営・設計・デザインの研究所に勤めていたことがあり、年末になると、「お年玉付き年賀はがき」用に、その年の干支を描いた2種類ほどのデザインを作り、得意先の商店にチラシを送って宣伝しました。すると、洋品店、菓子店、飲食店などの商店の得意先が、自店の顧客名簿をもとに枚数を申し込みます。
当時のお年玉付き年賀はがきは、当選率が高く、しかもミシンや洗濯機など豪華賞品が目玉の人気媒体でした。商店にとっても、年賀状は顧客への一年の感謝の大切な挨拶状です。
こうして、流行りの筆ペンで顧客の宛名が書かれた年賀状が次々と届きます。所長が研修で各地を回って広報するので、その数は多く、一店平均200枚としても50店で1000枚ほどの年賀状が集まります。所員の中の二人がそれを持って、例えば「戌(いぬ)年」には、「忠犬ハチ公」(秋田犬)出身地の秋田県大館市の郵便局に運んで投函します。はがきには「今年の干支の○○にゆかりの○○町にて投函」という独自のスタンプを作って、押印します。
卯年の時には、兎を助けた大国主命を主神とする「出雲大社」の町の通便局に、私ともう一人が夜行列車で運びました。驚いたのは大量の年賀状を持ち込まれた郵便局です。今は省略されていますが、当時は年賀状一枚一枚に消印が押されました。しかし、局長はどこでも、快く引き受けてくれました。年賀状のはがきDMを届けた二人は、その町に泊り、ゆっくりと旅を楽しみます。いわば、ご褒美です。毎年、所員がペアを組んで順に各地へ旅しました。
チラシ・DMの紙媒体が宣伝物の主流だった時代の、アイデアマンだった所長の企画です。
時を経て、今やデジタルメディアの時代。所長ならどんな活用をするだろうか、と想像します。また、自分自身でもIT系で工夫を練ることは、実に楽しい時間だと考えています。