一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達 昌人
今年初めて、「青大将(アオダイショウ・蛇)」に出会いました。
渋谷へ行った折にJR原宿駅で途中下車し、表参道口を出て、桜が満開の「代々木公園」に向かうゆるい坂の、片側の斜面の草むらに、緑がかった灰褐色の蛇腹の模様の姿態が見えました。温暖な日々だったので、早めに冬眠から抜け出したのでしょう。
穴を探して、下方や上方に頭を巡らし、その度に体の向きを変えていましたが、結局は、進行方向を上方の穴に決めたようでした。身長は1m以上なので、成人した蛇でしょう。
青大将は、カエル、トカゲ、ネズミなどを食餌にするのですが、この辺りにはそうした小動物が棲息しているのでしょうか。
以前に沖縄や台湾などで見た「ハブ」の、三角形の角張った頭部や鋭く細い目に比べると、青大将の頭は楕円球形で、丸くてやさしい、利発そうな目をしています。
子供の頃は、田舎には石垣や泉水が多く、青大将をよく見かけました。庭を跳んで逃げるカエルを追いかけて捕獲し、くわえた獲物を脚からだんだんに頭の方へと回して、キーキーと鳴くカエルを飲み込んでいく恐ろしい光景を、ドキドキしながら観察していた記憶があります。獲物を飲み込んだ後は、縄のような体の一部が、コブのように膨らんでいました。
また、ネズミを退治してくれるということで、天井の梁に青大将が住んでいて、守り神として大切にしているという大きな屋敷もありました。
しかし一般には、蛇は昔から怖がられ、まさに蛇蝎のように嫌われて来たようです。
何故か? マムシなど毒蛇のイメージからの恐怖感があるのでしょう。
そして、手足でなく、体をくねらせて進む、いわゆる蛇行(だこう)が不気味です。
さらに、地球に生命が誕生して、水中に入って魚類、イモリなどの両生類、爬虫類、哺乳類へと、生物が進化していく過程で、蛇はその筋道にない、まったく異世界の生物であり、別の宇宙から来たのではないか、それが背筋をぞっとさせる違和感を生むという説もあり、かもありなんと思わせます。
西洋でも、蛇はアダムとイブをそそのかした悪者でもあり、またある時は知恵者であり、神殿・神像の装飾にも見るように神聖化されるなど、特別な存在であることは確かです。
ところで、爬虫類専門のペットショップを調べてみると、青大将(Japanese rat snake)も売られていますが(6,000円前後)、大人しく無邪気で、慣れれば純情だとのことです。感触もジメッとした感じでなく、サラッとして心地よい様子。
昔、神社の祭礼の際に見世物小屋が建ち、巨大なニシキヘビを首や体に巻きつけてて演じる妖艶な美女の芸人が登場しましたが、蛇は賢くてよくなつく可憐な動物なのでしょう。
さて、都心で一番広い空が見られるという代々木公園の桜は満開で、ソメイヨシノが中心ですが、カワヅサクラ、オオシマザクラも咲き、自分の好きなヤマザクラも観られて、心和むひとときを過ごすことが出来ました。
・蛇腹の模様の青大将の胴体。頭はどちらだったっけ?
・青大将の楕円球形の頭部と、
丸くて賢そうな目。
・気品の高いヤマザクラの一枝。
・代々木公園の満開のソメイヨシノ。黒い樹木と白い薄紅色の花のコントラストが格別。
一般社団法人 日本POPサミット協会
会長 安達昌人
明けましておめでとうございます。
会員の皆様には、つつがなく新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
一般社団法人 日本POPサミット協会は、昨年8月1日をもって第11期を迎えました。
ただし、第9期後半から第10期に及んで、今日のコロナ禍の状況により、協会としての本来の活動事業が確実に実施できなかったことを、誠に残念に、また申し訳なく感じております。
日本はもとより世界中が苦境に陥り、あらゆる地域、業界、人々の暮らしに甚大な被害が及びました。従来の状態に戻ることは困難で、ウイズコロナの新時代、まさにニューノーマル時代が始まっているという現状です。
各界の代表者、企業の経営者が、新聞・機関誌等に新年の所感や抱負を述べています。そこに共通して貫く願いは「復活(リバイバル)」だと言えます。未だ予測のつかない新型コロナへの警戒と抑制を強めながら、経済活動、環境改善、働き方改革、世界人類の平和、人道支援など、停滞していた状況からの復活を誰もが要望し、目指しているようです。
そして、今日の進路の要の一つがDX(デジタル・トランスフォーメーション)であり、またSDGs(エス・ディー・ジーズ=持続可能な開発目標)です。
私たちの日本POPサミット協会も、本年は「復活」を指針として、POP広告を主軸とした販売促進活動を基に、売りの現場で、また教育指導などあらゆる場にあって、着実な事業活動を図りたいと願います。
今や日本は、どこにあっても「デジタル化」が主題とされ、当協会の事業活動にも活かされるべきです。
ただし、「デジタル化」重視の風潮にあって、その対極にある「アナログ」が軽視される傾向も一部に見られます。(通常、「アナログ」は「アナクロニズム(時代遅れ)」と混用され、デジタルに対比して、古い時代のもの、古い手法と誤って解釈されがちです。簡単には、データの連続的な変化を物理量で表わすのが「アナログ」であり、「デジタル」は連続的な量を段階的に切って数字で表すことを指す言葉です。人間の手によるクリエイティブ作業など「アナログ」でなければ出来ない重要なものも数多いのです。)
私たちは、デジタルを取り入れながら、アナログも大切にするという両輪を踏まえた活動で、進展していきたいと望みます。
また、SDGsに関連して「サスティナブル」の用語がよく使われますが、周知のように「持続可能な」という意味で、自然にある資源を長期間維持し、環境に負荷をかけないよう利用していくことを指します。私たちの協会も、作品の制作や教育において、商品情報を書き込む際には、サスティナブルな理念に基いて訴えることを大切にしたいものです。
話変わって、本年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公は北条義時です。昨年の「青天を衝け!」の主人公は渋沢栄一。最初は視聴率が高かったものの、終わりはきわめて低かったようです。登場人物が多過ぎて複雑、歴史や金融関連が入り混じり、渋沢栄一の偉人伝のようで、しだいに疲れた視聴者が離れたとされます。ただ、私自身は政権交替の歴史や金融機関などの変遷に興味があり、面白く視聴しました。
北条と言えば、元寇を退けた鎌倉幕府第8代執権の北条時宗が名君として著名で、それに対して義時は、目上の人間を監視したり追放したりして、悪人のイメージが強い存在です。しかし義時は、源氏と平氏の争いの際には、不利だと思われた源氏をバックアップ、その後の幕府内の権力争いにあっても、冷静な判断力、時代を見る目の鋭さで生き残ります。こうして、伊豆の豪族から武家の頂点にまで上り詰めます。
義時が生きた時代は、今日とよく似たサバイバル時代。固定観念に捉われずに広い視野を持ち、柔軟な感覚で臨機応変に望む姿勢は、私たちの活動にあっても学ぶべきだと思います。
さらに、女性活躍の推進が今日の課題になりますが、ひるがえって見れば、私たちの協会は、ほとんどが女性会員で、まさに女性のプロフェショナル集団です。女性特有の感性、観察力、ひらめき、小まめな実行力を発揮して現在に至っているのは素晴らしく、誇れることです。
新しい年を迎えて、協会もさらにいっそうの発展を目指し、「復活」の方針で歩んで行きたいと願いますので、どうぞ会員皆様のご賛同とご協力をよろしくお願い申し上げる次第です。
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達昌人
皆さん、こんにちは! にわかに寒さ厳しい日々となりましたが、お元気にご活動のことと推察いたします。現状ではCOVID-19も身を縮め、息をひそめている様子です。
さて、「POP&マーケティング用語集」について、皆さんの意向を伺ったときに、会員の丸山浩美さんのメールに、「無農薬」という言葉は使えないというような項目も取り上げると良いとありました。貴重なご意見です。
確かに「無農薬」「減農薬」は今や禁止された用語です。しかし現在も、通販の商品や、スーパーの青果売り場のPOP広告などで見かけます。そこで今回は、農産物の禁止用語について触れてみたいと思います。
「無農薬」「減農薬」については、農林水産省のホームページの「特別栽培農産表示ガイドライン(平成19年4月改定)」の中で、「消費者が一切の残留農薬等を含まないとの間違ったイメージを抱きやすく、優良誤認を招くため、表示禁止事項です。」とし、さらに「『減農薬』『減化学肥料』表示は、削減の比較基準、割合及び対象(残留農薬なのか使用回数なのか)が不明確であり、消費者にとって分かりにくい表示なので、表示禁止事項です。」と明記しています。
では、売り場の商品の表記はどうか、またPOP広告の状況はどうか。近くのスーパーの青果売り場を見てみると、
(1)何も書かれていない農産物(農薬や化学肥料を使った一般的な栽培=慣行栽培農産物)
(2)有機栽培農産物(農薬や化学肥料を使わない栽培)
(3)特別栽培農産物(どちらにも属さない栽培)
の3種類の表示が見られます。実際に法律や表示ガイドラインでは、日本の農産物はこの3種類に分けられます。つまり、日本の農産物に表記してよいのは、「有機栽培農産物」と「特別栽培農産物」ということになります。
「有機栽培農産物」は、スーパーでたまに見かける「有機JASマーク」のシールが貼られた青果物類です。「有機栽培(有機農業)」の定義は「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」(「有機農業の推進に関する法律」平成18年法律第12号)とされます。
「有機JASマーク」は、有機農産物の日本農林規格(JAS規格)に従った栽培方法で生産が行われていることを第三者機関(登録認証機関)が検査して、使用が認められます。有機JASマークの使用が認められていない事業者は、農作物に「有機」「オーガニック」といった名称を使うことは法律で禁止されています。
「特別栽培農産物」とは、世間的にほとんど認知されていない表示で、「有機栽培農産物」とどう違うのかと、戸惑う人が少なくないようです。
先のガイドラインでは、原則として「農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学合成された農薬及び肥料の使用を低減することを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培方法を採用して生産すること」と定められています。
そして、生産する時に、
①節減対象農薬を使用の際、その地域の同時期に慣行的に行われている回数の50%以下、
②化学肥料の窒素成分量が栽培地の属する地域の50%以下で栽培された農産物とされます。「節減対象農薬」には除草剤・殺虫剤・殺菌剤・土壌消毒剤なども含まれます。また、比較基準となる化学肥料の通常使用料の値は、各地方公共機関が品目ごとに策定したものとなります。
少しややこしくて分かり難いのですが、要するに「有機栽培」は化学農薬・化学肥料を使用しないことが原則で、「特別栽培」の場合は、化学農薬・化学肥料を減らすことが目的となっています。
「特別栽培農産物」を理解しやすいのは、ふだん食べているお米の「特別栽培米」で、節減対象農薬や化学肥料を慣行レベルの5割以下で育てたお米です。
米袋の表に「特別栽培米」を訴えている例もあり、現在は、裏には「農林水産省新ガイドラインによる表示」として「特別栽培米」の表示と、例えば「節減対象農薬:栽培期間中不使用(あるいは『○○地域比〇割減』)」(化学肥料も同じ表示)、続いて栽培責任者名や所在地、連絡先などが明記されています。
お米の写真は「伝説の日野米」のタイトルの下に「鳥取県認証「日野」特別栽培米」と表示し、「特別農産物」の認証シールが貼られています。
鳥取県の大山(だいせん)山麓の「こしひかり」で、通常栽培より農薬を5割、化学肥料を9割削減としていて、第13回環境保全型農業推進コンクールで優秀賞を受賞しています。
皆さんも健康安全を留意してお米を買う方は、裏面の農水産省指定の表示で確認されると良いでしょう。
広告等の禁止用語には、この他に「不当景品類及び不当表示防止法(「景品表示法」「景表法」とも)や、「薬機法(旧・薬事法)」、また「景品表示法」では「不動産のおとり広告に関する表示」など、業界の細かい禁止事項も定められています。
POP広告作成にあっては、注意すべき不当表示が数多くて、キャッチコピーその他の広告文案づくりには苦労しますが、広告の禁止用語については、また次回に取り上げることにしましょう。
以上
一般社団法人日本POPサミット
会長 安達昌人
郵便局に出かけた際に、時折買っていた記念切手が溜まっていたので、それが今は、どれほどの価値になっているかを知ることも、郵政博物館訪問の目的の一つでした。
結果を言えば、明治・大正・昭和初期のよほど珍しい特殊切手は別として、ふだんの郵便料金と同等の値打ちということで、当ては外れました。
主な目的は、博物館の貴重な所蔵品を見ることです。
「郵政博物館」は、現在、東京スカイツリータウン・ソラマチの9階にあります。かつて千代田区大手町にあった「逓信総合博物館」が閉館し、その一部を引き継いだ施設として、2014年(平成26年)3月にオープンしたもの。
その起源は、1902年(明治35年)に万国郵便連合加盟25周年記念祝典行事の一環として、逓信省が開館した「郵便博物館」にさかのぼるとされます。
その後、逓信省は、交通・通信・電気を幅広く管轄していたことから「郵便博物館」を「逓信博物館」と改称。さらに、逓信省が郵政省と電気通信省に分割され、逓信博物館は郵政省の附属機関となり、戦争中の資料の疎開、逓信博物館の運営母体の一社であった東日本電信電話(NTT東日本)の離脱、また博物館が移転を繰り返し、現在の「郵政博物館」に至ったものです。
日本の郵便事業は1871年(明治4年)に始まり、1873年に郵便はがき発行開始、そして小包郵便取り扱い(1892年)、最初の記念切手(明治天皇銀婚)発行(1894年)、年賀郵便取り扱い開始(1899年)、鉄製の赤いポスト登場(1901年)などの軌跡をたどっています。
そこで、館内のテーマ別コーナーに展示されている所蔵物も、国内外の切手(約33万種)、郵便配達夫の帽子・制服、郵便行李、鉄道郵便車、そしてエレキテルと「エンボッシングモールス信号機」「ブレゲ指字電信機」(ともに重要文化財)、郵便貯金や簡易保険に関する各種展示物などと、価値ある品々で溢れています。
さて、「東京郵政局」が大手町にあった頃、当時の特定郵便局の局員の方を対象に「プリントゴッコ」によるDM講習を、理想科学工業の紹介で出講しました。
年賀状発売前の研修では、キャッチフレーズ作りの際に「元旦にもらってうれしい初便り」と書いた人がいて、それがのぼり旗にも活用されました。DM研修は、特定郵便局内の年賀状や暑中見舞い状のディスプレイ講習会にも発展。
その後、「関東郵政局」の「DMコンテスト」審査や、横浜市、新潟県へもDM講習で出張しています。
研修の時に、東京郵政局の郵便事業の課長が挨拶で「ネコには絶対に負けるな!」と全員にゲキを飛ばしていたのが記憶に鮮明です。当時、台頭してきた宅配便業界への競争意識と誇りでしょう。
民営化寸前で、年賀状が最盛期だった頃の、懐かしい思い出です。
一般社団法人日本POPサミット協会
会長 安達昌人
皆さん、こんにちは!
猛暑の後に記録的大雨の日々、会員の皆さん方には、いかがお過ごしでしょうか。
コロナ感染拡大の方は、新種のコロナ変異株の蔓延のためか、あるいは警戒心の緩みか、一向に収まらない状況です。いつ終息するかは予測できないでしょう。
こうした状況にあって、東京都知事の発言が話題になりました。小池知事といえば、環境大臣時代に「クール・ビズ」を掲げて注目されましたが、これは環境省の一般公募によって決められたものらしい。その後の知事の発言は、カタカナ語の連発で、各方面から不評を買っているようです。
コロナの状況の外出抑制について「ステイホーム(おうちにいましょう)」などは、自分たちは外人か、と憤懣の声も出たとのこと。「今が、オーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ道」の「オーバーシュート」は、「爆発的な感染者急増」の意味。その他、「東京アラート(警告)」「ウイズコロナ(コロナとともに)」などいろいろ。
特に、「エッセンシャルワーカー以外は、東京に出てこないでいただきたい」との発言の「エッセンシャルワーカー」は、ほとんどの人に意味不明。英和辞典で調べると、「必要不可欠な労働者(essential worker)」のことで、医療・福祉や保育、運輸・物流、小売業、公共機関などが該当し、社会基盤を支える仕事に従事する人たちとされています。
何故、カタカナ語を連発するかと言えば、注目度を高めてメッセージを印象付け、警告を強化する狙いだろうと推測されています。さらに海外に留学していた習慣からとも。
もっとも私は、小池知事は特有の感性を持ち、文案づくりの巧者だと考えています。
例えば、昨年11月の緊急記者会見で、都民の忘年会を控えた会食について「5つの小」を提唱。「少人数で、小一時間、小声で、小皿で、小まめに、こころづかい」として、高齢者の会食は控えるようにと促しました。ところが、会見当日の夜に、高齢者の財界人5人と会食して、その言行不一致に批判を浴びています。
本年6月4日の定例会見では「8時だョ!みんな帰ろう」の標語が話題になりました。
カエルが描かれたフリップボードには「・午後8時にはみんなかえる ・職場からかえる ・お店からかえる ・寄り道せずかえる ・ウチで気分をかえる」とカエルシリーズを表示。ただし、非常事態宣言下で、ドリフターズ(志村けんも亡くなった)のパロディは軽率で怪しからぬと、各方面から反撃されました。さすがに最近は自重の様子です。
さて、現状にあって、最も不遇な立場にあるのが飲食店で、廃業の憂き目にあっている店舗も多いようです。
しかし、その中にあって、さまざまに工夫を凝らしている例も見られます。
今やオンラインセミナーを観る機会が増えましたが、玉石混合のセミナー中にあって、最近、興味を引かれたのは、「DXで変わる飲食店経営~コロナ禍を生き抜く収益拡大の仕組みづくり~」(日本経済新聞社主催・日経メッセリテールテックJapan《8月6日無料公開》)です。皆さんの中には、観られた方がいるかもしれません。
7人ばかりの論者が登場しましたが、実際に店舗経営に携わる2人の方の発表に聞き応えがありました。ここに紹介してみます。
その一人は、京都市の「佰食屋(ひゃくしょくや)」の若い女性経営者です。同店は1日100食限定で国産牛ステーキ丼を提供する飲食店で、11時~14時半営業。行列が絶えない人気店でしたが、感染拡大の影響は免れず、4店舗のうち、繁華街にあって集客が落ち込んだ2店舗(テナント料も高額)を早い時期に閉鎖。現在は京都・西院の本店と、すぐ近くの四条大宮の「佰食屋1/2(1日50食)」の2店で営業中(HPで公開)。
店名通り、100食限定なので、必要な分の材料だけを地元の食材店で仕入れて、閉店後は何も残らずフードロスはゼロ。冷凍庫は無し。「100食しかない」「ランチのみ」「コスパが最高」という希少価値が集客効果を高めています。ステーキ丼は国産牛120gを使っていて、一般の飲食店の原価率がほぼ30%に比べて、同店は50%なので他の店舗は真似ができません。
本年4月、京都市に緊急事態宣言が実施される直前に、いち早くテイクアウト営業のみに切り替え、メニューもステーキ丼とハンバーグの単品に絞っています。電話予約のみで電話が鳴りやまない状況。。テイクアウトなので洗い物などが無く、通常営業では100食に従業員5人の態勢が3人になり(50食の店は2人で対応)生産性が向上しています。
今後の方向としては、例えば居酒屋チェーンにランチやデリバリーとして参入して全国展開を図るとか、阪神淡路大震災の際に自力で脱出した経験から、人を救うのは筋力だとのポリシーで「防災筋力」の意匠登録を出願。高タンパク商品の開発と筋力トレーニングをサポートする仕組みや制度の導入など、意気軒高の夢を持っているようです。
今一人は、「東京からあげ専門店・あげたて」(全国177店・現時点)の男性経営者。
現在はデリバリー専門で、本部がオーダーを取り、加盟店(居酒屋や飲食店など)が唐揚げを作り、配達業者が注文主に届けて、それぞれが利益を分配するシステムです。
デリバリー・テイクアウトは今や飲食店の主たる活動で、その成果はまちまちですが、「あげたて」は業界№1を誇っています(詳しくはHPを参照)。
この企業の優れている点は、「顧客を知る」という方針。実店舗と違ってデリバリーは相手が分からない、食べる人を知らなくてモノは作れないと、配達品にQRコードなどを入れた独自のアンケートでリサーチ。調査の結果、唐揚げの注文客の48%は20歳~30歳の女性一人客と判明。これまで、ガッツリ食べる若い男性を狙ってきたメインターゲットを、女性20代一人使用、見た目重視の揚げたて品質、というニーズに合わせて業態を設定、価格もアップ。あらゆるネット広告を利用して、集客を果たしています。
今後は、さらなる工夫を凝らすさまざまな対応が出現するものと、期待しています。