「言葉」は時代によって変化するもの、そして、その時代を反映するものと言われます。日進月歩の今日の状況にあっては、最新の技術や施策が次々と生まれ、それに伴って、新しい言葉も増えていきます。特にデジタル化の進むビジネスシーンはもとより、日常の業務あっても、数多くのマーケティング専門用語、カタカナ語、英語略語がふんだんに使われている現状を目にします。ただし、実は正確には分からない、説明できないという言葉も少なくないようです。
そこで、POP広告に関わる人たちから、流通業に携わる多くの人たちが必要とする用語を検索する時に、すぐに役立つ用語集となるよう、POP広告用語を主軸として、関連する基本的な経営用語から、最新のITビジネス用語まで取り上げて構成しました。ぜひ、有効にご活用ください。
POP&マーケティング用語集は、下記の5つのカテゴリに分類して意味を表記しています。それぞれのカテゴリーは「あいうえお順」「ABC順」に用語を列挙しています。用語の中の知りたい単語をクリックすると該当する行の見出しに飛ぶので、そこから知りたい用語までスクロールしてください。
例)知りたい用語「キャッチコピー」
POPカテゴリ-「POP&広告関連編」の用語から「キャッチコピー」をクリック。
【か】の見出しに飛ぶので、そこから下にスクロールして「キャッチコピー」を探してください。
●アイキャッチャー ●アドバタイジング ●アニメーション広告 ●イラスト ●永字八法 ●オーナメント ●オノマトペ
●価格表示 ●影文字 ●カッティングシート ●カリグラフィ ●勘亭流 ●キャッチコピー ●キャプション ●クチコミ ●グラフィックデザイン ●ゴシック体 ●コラージュ
●サービスサイン ●サブタイトル ●3Bの法則 ●ショーカード ●スイングPOP ●スペーシング ●スペック ●スポッター ●スローガン ●創作文字 ●装飾文字
●ターゲット ●チラシ広告 ●デジタルサイネージ ●トレードマーク
●丸筆、平筆、ポスターカラー ●明朝体 ●メインタイトル ●メディアミックス ●モビール
アイキャッチャー(Eye Catcher)
英語で「人目を引くもの」の意。各種の広告・デザインにおいて、人の注意を引き付けるための視覚的要素の総称。狭義では、広告で継続的に使用するために、意図的に制作された図像を意味し、一目で商品や広告主を想起させるものとされる。なお、広告業界ではこのような要素を、単に「アイキャッチ」とも称している。アイキャッチャーの具体例としては、特定の写真、イラスト、キャラクター、ロゴタイプ、カラーなどがある。
アドバタイジング(Advertising)
英語で「広告」また「広告活動」のこと。産業、企業、非営利組織、個人により、さまざまなメディアを通してメッセージを伝達する手法。
アニメーション広告(Animation Advertising)
アニメーション動画を使って制作される広告。国内動画広告市場調査(株式会社サイバーエージェント)によれば、市場は年々、飛躍的に上昇している。動画広告の視聴デバイスは、現在はスマートフォンなどのモバイルがメインとなり、その割合はほぼ9割。かなりの制作コストと時間がかかるものの、訴える内容の分かりやすさ、親和性を考えた時、アニメーション広告はきわめて優位性の高い広告手段として、今後いっそうの市場の拡大が予想されている。
イラスト(イラストレーション Illustration)
本来は、新聞、雑誌、書籍の文章に添えて視覚的効果をねらう解説図、さし絵などをいう。POP広告をはじめ、宣伝に使われるポスターなどの媒体で広く活躍している。簡単に「イラスト」と呼ばれている。
永字八法
「永」の字の各点画が、書法(用筆法)上のすべての基本を包含していることから、古くから書法伝授や手習いの初歩的段階の一方法として、、用いられてきている。各部の名称は、筆順に従って、①側(そく)=第一筆の「点」、②勒(ろく)=第二筆の「横画」、③努(ど)=第三筆の「縦画」、④趯(てき)=第四筆の「撥(はね)」、⑤策(さく)=第五筆、左から右上に引く画)、⑥掠(りゃく)=第六筆、続いて左下へ引く画・左はらい)、⑦啄(たく)=第七筆、右から左下に引く画・うちこみ)、⑧磔(たく)=第八筆、左から右下に向かって引く画・右はらい)の八法。その起原は隷書(れいしょ)体の生まれたころにあるという。日本には江戸時代に輸入され、手習いの便法として流行した。今日でも、漢字のレタリング学習にも活用される。
オーナメント(Ornament)
飾りや装飾、装飾品、飾り罫などを指し、広義にはインテリアや置物、小物などのことをいう。POPでは、シンプルな線や飾り、模様などをあしらったデザインパーツのことを表し、「罫線」「飾り罫」「囲み罫」などはよく使われる。
オノマトペ(Onomatopoeia)
フランス語で「擬声語(ものの音や声を真似た語)」「擬態語(ものの状態を真似た語)」のこと。キャッチコピーなどで「カリッとした口当たり」「ポンポンと弾む」などと表現すると、実感があって伝えやすく、コピー技法の一つとなっている。
価格表示(総額表示)
消費者に対して商品やサービスを販売する小売店の事業者が、値札や広告などで価格を表示する際に、消費税額を含んだ支払総額を表示することを言う。すなわち「税込価格での表示」である。総額表示を行うことで「レジで最終的にいくら払えばいいのかを明確にする」という、消費者の利便性に配慮する観点から、2004年4月に義務付けられ、実施されている。
影文字
文字の形に光が当たって影ができる状態を表現したデザイン文字の一種で、影をつけることで、文字が浮かび上がって見える効果がある。例えば、左上からの光と仮定した場合は、文字を右下にずらすイメージで影の部分をかく。文字と影の線幅や色の組み合わせ方により、様々な印象に仕上げることができる。文字の形を書かずに影のみで文字に見せる手法もある。
カッティングシート(Cutting Sheet)
看板やガラス面などを、ロゴやイラストで装飾する粘着剤付き塩ビ製フィルム。薄くしなやかで、重ね貼りしやすいのが特長。カラーが豊富で、半透明のシートなど種類が多い。株式会社中川ケミカルが商標登録をしている。
カリグラフィ(Calligraphy)
西洋や中東などの文字を美しく見せるための書法。文字を美しく見せる手法という面では、日本や東洋の書道と共通する要素がある。その歴史は古く、もともとはギリシャ語で「美しい書き物」を意味し、ヨーロッパではグリーティングカード・看板・表札など、様々なスタイルで日常生活に溶け込んできた。 日本でも、クリスマスカード・バースデーカード、結婚式のウェディングボードなど、目にする機会が多いが、おしゃれなファッションのPOP広告などで効果を高めている。
勘亭流
江戸時代に、歌舞伎(かぶき)で、看板・番付や台本などの文字として、書道家岡崎屋勘六(かんろく)によって創られたとされる特殊な書体。筆法も線が太く、丸みのある字体で、桝いっぱいにお客が入るようにと、縁起をかついで「内へはいる」書き方をする。寄席文字、相撲文字にも使われ、総じて「江戸文字」とも呼ばれている。勘亭流は和風の商品ばかりでなく、「女性御免蒙る男の市」などメンズショップで使った例がある。
キャッチコピー
「人の注意をひくように工夫した簡潔な宣伝文句。惹句(じゃっく)」と、岩波広辞苑に見られる。「キャッチコピー」は和製英語で、1980年頃から日本で使われるようになり、それまでは「キャッチフレーズ」という言葉が、長い間、使われてきている。(キャッチフレーズも和製英語)。英語圏では「Tagline(タグライン)」「Slogan(スローガン)」または、単に「コピー」が一般的。キャッチコピーは、宣伝広告ではもっとも重要視される要素で、POP広告においても同様である。相手の心を一瞬で捉える短い文案がポイントと言える。
キャプション(Caption)
印刷物の写真やイラストレーションなどにつける簡潔な説明文。ネームとも言う。 新聞や雑誌の記事、本の章、節などの題目、見出しを言うこともある。
クチコミ
口から口へ、知人同士を経由し伝播される商品やサービスまたは企業の情報。知人や友人を介しての情報は受け入れやすく、購買促進を図るマーケティング手法として、通常の広告やプロモーションよりも大きな効果が期待できる。近年ではこの効果をWebの活用によく活用され、口コミ専門サイトやネットショップの「購入者の声(レビュー)」なども、この特性を利用したマーケティング展開といえる。
グラフィックデザイン(Graphic Design)
書籍、新聞、雑誌、広告宣伝物、パッケージなど、印刷物を媒体とするデザイン。テレビ、映画、看板などのデザインを含めて、ビジュアル・デザイン、またはコミュニケーション・デザインと呼ぶこともある。立体媒体を対象としたディスプレイ・デザインや工業デザインに対する用語。コマーシャル分野での活躍が多い。なお印刷媒体は紙に限らず金属、ガラスなども用いられるため、その分野はますます広範囲に及んでいる。
ゴシック体
日本では、縦画と横画の太さが均等で、飾りのない書体を指す。西洋において「Gothic」というと、単に「ローマン書体以外の文字」という意味しかなく、西洋では通用しない言葉である。「装飾性を排している」という意味では、欧文書体におけるサンセリフ体(Sans Serif・サンセリフ)に相当する。(日本の)ゴシック体は、「ゴジック」「ゴチック」とも呼ばれ、初期には当て字で「呉竹体」とも表記されていたことがある。ゴシック体は「装飾性がない」という性質上、視認性が高く、遠くから見ても文字が判別しやすい。そのため、注目させる屋外の看板や案内物などに向いている。一方、文章では、特徴のないゴシック体は可読性が低く、特に漢字が多い文章や長い文章、新聞などの小さい文字組では読みづらい。そのため、ゴシック体は文章の見出しなどに用いられる程度で、本文には主に明朝体が用いられている。ただし、ゴシック体には太字、中字、細字、丸コシック体などさまざまなタイプがあり、今日では可視性の高いスタイルが創られて、コンピューターの世界においては、ゴシック体は標準的な文章の書体とされている。POP広告の場合、強調するタイトルなどは、太ゴシック体が効果的である。
コラージュ(Collage)
フランス語で「貼りつけ」を意味する美術技法。20世紀初期にパピエ・コレが考えられ、後にピカソやブラックなどがこの手法を発展させ、画面に印刷物、布、針金、木片、砂、木の葉などさまざまなものを貼りつけて、新しい絵画を生み出した。POP広告でも、カラーペーパーや写真などを貼り付けることで、より手作り感のある作品が作成出来る。
サービスサイン
POP広告を、売るための媒体とするのではなく、購買客に対して商品の役立つ一言知識や、自店のサービス方針をメッセージする媒体としようというもの。かつて大久保秋人氏(商業文化研究所長)が考案して提唱し、各界に広めて普及した。今日のユニバーサルサービス(一般社団法人公開経営指導協会提唱)のPOPに共通するものと言える。
サブタイトル
副題。副標題。傍題。メインタイトルに添えて、さらに内容を分かりやすく伝える文言。サブキャッチなども同じ意味となる。
3Bの法則
美人「Beauty」、赤ちゃん「Baby」、動物「Beast」の3Bを広告に取り入れることで、ユーザーの目に留まりやすくなり、好感を持たれる心理的法則 をいう。 「3Bの法則」は、広告業界ではかなり以前から主要課題となっていて、マスコミ広告、POP広告からインターネット上の媒体まで、あらゆる広告の写真、イラスト、キャラクターなどに活用されている。
ショーカード
商品の説明をしたり、推奨しながら、需要開拓に結びつけるのがショーカードの役割である。顧客の知りたい基本情報、役立つ情報を、的確に、簡潔に表現する。ショーカードの用語は、POP広告が日本に紹介される以前から、日本では使われている。
スイングPOP
商品を注目させるために使われる立体POP広告で、棚や商品から飛び出し揺れることで注目させることができる。
スペーシング(Spacing)
字間を詰め固まりで見せることをスペーシングと呼ぶ。なぜスペーシングの必要があるのか?ということであるが、POP広告は読ませるのではなく、視覚に訴え、記憶や記録させることで購買へつなげると言われており、また人は3秒で「買うか買わないか」を判断する、とも言われている。従って瞬時に目に入るように寄せて書く。スペーシングすることで訴求力がアップし、瞬時に購買意欲に働きかける決め手となる。
スペック (Spec/Specificationの略語)
英語で「仕様」を意味し、仕様書のこと。パソコンや周辺の電子機器や、自動車を筆頭とする工業製品などの性能や機能を記した一覧。そうした機器のPOP広告作成の際に、参考にする場合が多い。また、スペックの関連表現として、「ハイスペック」という表現もよく使われれる。ハイスペックは「性能(スペック)が総じて良い」「高性能である」といった意味合いである。
スポッター(Spotter) あるいは、スポッターPOP
本来は監視するということであるが、陳列棚や什器から飛び出す販促物をいう。ゴンドラ間通路から突き出しているPOPがあることで、目立たせ、興味を生じさせる役割を果たす。特価商品や特に注目を集めたい商品、新商品などを注目させるために使われるPOP広告で、矢印型なども多い。
スローガン(Slogan)
標語、標語、合言葉、モットーなどと訳され、 団体・党派・政府などが、その主義・主張を一般に呼びかけるために、端的に言い表わした語句のこと。その語源は、「ときの声、集合合図の叫びの意」で、本来、スコットランド高地人などが危急のさいの呼集のためにあげた声であったとされる。今日では、スローガンは企業のPRから交通安全、防犯、そして政治的領域にいたるまで広く使われている。覚えやすく、情緒や感性に訴えるということが重要で、簡潔性、印象性、適時性などが重視される。
創作文字
既存の文字にはない、新たに作り出された文字を意味する用語である。POP広告のほか、印鑑、ロゴ、シンボル、レタリングデザイン、書道デザインなど様々な創作文字が利用されている。
装飾文字
装飾とは、直訳では飾ることや飾り物をいうが、装飾文字とは、文字を実質以上に美しく魅せ、引き立てるテクニックの一つである。例えば、影付き文字、縁取り文字(袋文字)、様々な装飾文字が使われている。
ターゲット(Target)
本来は「標的・まと」のこと。販売やマーケティングでは、需要客のどの層を自社(店)の対象として狙うかという顧客層をいう。例えば、年齢層別でみた時は、ヤングアダルトかシルバー層か、などがターゲットとなる。ターゲットの設定は、マーケティングの基本ともいえるもので、広告や販売促進戦略などもそのターゲットの特性に対応したアプローチで展開されることになる。
チラシ広告
広告のために配り散らす刷りもの、ビラ、引き札(「岩波広辞苑」より)。日常生活にもっとも身近な、昔から親しまれている紙媒体の広告である。形態からみれば、新聞折込みチラシ、個別投げ込みチラシ(ポスティング)、街頭手渡しビラ、店頭置きチラシ、ハンドビラ、ショップカードなどさまざま。内容面では、フェア・イベント、セールの告知チラシ(商店街、SC、個店、その他教室など)、オープンセールチラシ(創業、新装開店など)、新商品発売のチラシ、情報性主体のチラシ、異業種店のタイアップチラシ、求人案内チラシなど種類は多い。セールではほとんどが価格訴求タイプといえる。VC本部で作成して、
店名入れ替えのチラシも見られる。
メリットとしては、①親しみやすく、手に取って見やすい、②読者は主に女性、特に主婦客に対しては最大の武器、③速効性があるが、ただし効果期間は短い。④印刷も簡単で、日数もかからず、すぐに配布できる、など。デメリットとしては、①手軽なことから、他の媒体に比べて信用度はやや低い、②対象は絞れない。新聞の性格で、ある程度客層は選べる。③販売期、休日前には同居チラシ多く、自社の注目度は低い。④注目時間が、DMなどに比べ、やや短い、など。
ただし、新聞の配布数が減少している状況から、折込チラシ数も減少傾向にある。ユニークな例では、衣料品店が地域の書店と契約し、ファッション誌に自店のチラシを挿入させてもらった例もある。なお、日本では江戸時代から「絵札」「引き札」の名称で、商店が季節の売り出し、新商品発売などのチラシを配布している歴史がある。
デジタルサイネージ(Digital Signage 電子看板)
屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で、電子的な表示機器を使って情報を発信するメディアを総称して 「デジタルサイネージ」と呼んでいる。ディスプレイの発展、デジタルネットワークや無線LANの普及とあいまって、今や施設の利用者・往来者に日常的な広告媒体として認知され、私たちの身の回りには、すでに多くの場所でさまざまなディスプレイや表示機器が設置されて、広告に限らず多様な情報が提供されている。 街頭の大型ビジョンや駅や空港、スーパーマーケット、ショッピングモールなど商業施設はもちろん、エレベーターや小型店舗、大学、ホテル、金融機関、病院などにもデジタルサイネージは急速に広まっている。デジタルサイネージは、今後いっそう「リアルな消費の現場に近いメディア」として注目され 求められている。
トレードマーク(Trademark)
その人物を特徴づける独特の外見を指す場合と、登録商標や銘柄、ブランドなどを指す意味がある。商標とは、事業主が同業他社と区別する目的で使用するマーク(識別標識)のことで、商品名やサービス名、看板、ロゴ、キャラクターなどである。さらに登録商標の手続きをすることにより、他人に真似されるという事態を避けられ、お客様からすると、安心感や信頼から次の消費行動にもつながっていくものである。
のぼり
昔からの日本の旗指物スタイルである。一般的に”のぼり旗”と呼ばれる。通行人の目に触れやすく、風で動いて注目を集め、売り出し、イベントをアピールするとともに、店頭に活気をもたらすことが出来る。
のれん
出入り口に付けられる、風や日差しをさえぎる布をいうが、江戸時代以降、商家では屋号や家紋を染め抜いて、店の軒先に看板を兼ねて使われた。しかし次第に、機能性から店の象徴としての意味合いを持つようになり、ブランド力、信用力、顧客との関係などの目に見えない価値を表すもので、目に見えない無形資産として会計上の専門用語でも使われる。
ハンガーパネル(Hanger Panel)
シーリングPOP(天井から吊るすPOP広告)の一種で、天井からテグス(釣り糸)やロープ、チェーンにより吊り下げて使用されるPOPのこと。高い位置に設置されるためPOPとしての効果は高く、ひと目で対象商品の売り場がわかる。イベントの展開やコーナー表示、売場誘導としてのサインツールの働きをするとともに、天井を装飾的に活気付けることが出来る。比較的大きな店舗で使用されることが多い。
POP広告(ピー オー ピー)
Point(場所・時点)Of(・・・の)Purchase(買い物・購買)Advertising(広告)の頭文字による用語。買い物の場所(ポイント)で、商品の特色(ポイント)を訴える広告であり、購買時点広告とも呼ばれている。もともと、アメリカの広告代理店が、メーカーのマスコミ広告に関連して売り場の広告を制作し、商店に提供していた媒体。その後、大型店の台頭など商業者の優位、またコンシュマリズムの高まりなど、時代の変転により、POP広告もそれに応じて、買う消費者サイドに立つ媒体へと変貌している。また、専門家が担当する欧米と違って、日本では誰もが容易に手描きPOPに取り組む点が特色である。
POP広告クリエイター
POP広告クリエイター技能審査試験は、1987年(昭和62年)より厚生労働省の「技能審査認定規定」に基づき、唯一一般社団法人公開経営指導協会が厚生労働大臣の認定を受けスタート、2002年より当協会認定準公的資格試験として実施してきた。
この試験制度の目的は、小売業あるいは広範なサービス業における販売または販売促進業務に従事する職員の有するPOP作成能力を審査することにより、これらの職務に従事する人の技能の向上及び社会的、経済的地位の向上を図り、ひいては小売業、サービス業の発展に寄与することにある。店舗及びサービス機関におけるPOP広告を、販売促進ツール・コミュニケーションツールとして捉え、単なるレタリング技術のみではなく、幅広いPOP広告作成能力を審査するものである。(一般社団法人公開経営指導協会資料より)
POPの取り付け方
どんなに優れたPOPでも商品が主役である以上、商品が活かされる場所に取り付ける必要がある。お客様の目線の動きや導線計画に合わせて取り付けることが必要である。
ポイントは、取り付け方によって変わってくる。
取り付け方のポイント
POPの用紙とサイズ
用紙は、種類、名称、大きさ(サイズ)、厚さ(重さ)など、様々、細かく分類される。用紙の選び方によっては、デザインもそうだが、クオリティの差が出てしまう。用紙によって、親近感を与える、重厚感や高級感を演出するなど、アピールできる要素ともいえる。
1. 用紙の種類
ケント紙、上質紙、コート紙、アート紙、特殊紙などは、POP広告制作によく使われる。POP制作のベースづくりだけでなく、カラーの用紙をコラージュ(貼り合わせの意味で、塗りムラをなくす、ボリュームをだす、制作時間の短縮などの利点がある。)するのにもよく利用される。
2. 用紙の名称(規格)
日本においてJIS規格に定められている原紙は6種類に分かれるが、主にA判、B判、四六判、菊判がよく使われる。
3. 用紙の大きさ(サイズ)
紙の大きさは裁断によってサイズの名称が0判から10判まで異なる。
A版規格サイズ表
4. 用紙の厚さ(重さ)
紙の厚みなのに「kg」の単位が使われるが、原紙を1,000枚重ねた時の重さが基本となるからである。例えば、原紙1,000枚を重ねた重さが90kgの場合、紙厚は90kgとの言い方をする。
5.POP制作の折の紙の選択は、まず商品が隠れない大きさを選ぶ
吹き出し・季節のイラストの形・立体など、訴求商品に適したムードや季節感を表現するなど、楽しい演出も考慮に入れる。
1つの売り場に一定のスタイルのカードを取り付ければ整然とした売場演出ができ、特に強調したい推奨品や特価品は特別なカードで注目させると良い。四角い用紙だけでなく色々な形で楽しい演出も心掛けたいものである。
フェルトペン(マーカー)
POP制作に欠かせないのがマーカーであるが、大きく分けると芯の先端が丸くカットされている丸型マーカー(通称:丸ペン)と芯の先端が斜めにカットされている角型マーカー(通称:角ペン)、芯の先端の幅が角型マーカーより広く、真横にカットされている極太マーカー(通称:平ペン)の3種類あり、芯の先端の形によって持ち方や使い方が異なる。フェルトペンのいわれは、ペン先にフェルトまたは合成繊維あるいは合成樹脂を使用し、毛細管現象によってペン軸となる容器からインクを吸い出し描画する筆記具・画材だからである。
吹き出し
漫画やイラストなどで、登場人物のセリフを書いている囲みの部分のこと。人物の口から吹き出したような形であるが、その形は様々にアレンジすることができ、それによって異なるイメージを自由に表現することができる。オーナメントにおける「囲み罫」の一種である。
袋文字
デザイン文字の一種で、輪郭線だけがある文字のこと。「ふちどり文字」「白抜き文字」などとも呼ばれる。
筆ペン
細いナイロン繊維による人造筆で、動物の毛の筆に比べて、コシの強いのが特徴。弾力性があって、運筆も滑りが良い。当初の筆ペンは、セーラー万年筆が1973年に発売し、手軽に使えること、特に年賀状の宛名書き用で普及。各文具メーカーも相次いで開発し、品質も向上した。近年は、年賀状の宛名書きがパソコン入力となり、筆ペンを使う人は減少。ただし、和風感覚のPOP広告に活用され、カラー筆ペンなど、カリグラフィやイラストに使われて、欧米でも人気は高い。
プライスカード(price card)
商品の価格を中心に表示するカード。品名、価格、データ(容量、数量、品質など)、ブランド名なども表示するが、商品のひとことコピーなど添えれば、その特長をさらによく伝えることが出来る。価格は、総額表示で記入する。
フラッピング(flapping)
風でひらひらする平たいものということで、棚や容器に設置してある商品の間から飛び出していて、人の動きによって揺れることで注目させることが出来る。
ブラックボード(blackboard)
「ブラックボード」の訳は「黒板」であるが、現在、既成の商品としては、「黒板」と「ブラックボード」は区別されている場合が多い。
「黒板」はチョークなどで文字や図などを書くための掲示用の板(黒板塗料が塗られたもの)である。学校でもよく利用されていたが、チョークの粉が残りやすく手が汚れるため、ホワイトボードに替わりつつある。
一方、すでに一般的であるホワイトボードに替わる黒色のボードとして登場した「ブラックボード」は、主に店舗のPOPやメニュー用に使用される事が多く、専用のブラックボードマーカーと組み合わせる事によって非常に高い視認性を発揮している。現在では、表面仕上げが異なるもの(つやタイプ・マットタイプ)やチョークもマーカーも使える両用タイプなど、種類も豊富になり、チョーク風に仕上がる専用ペンなどもある。
ポスター(Poster)
一般には、広報や広告を目的とした大型の張り紙のことを言う。紙片を柱(ポスト)や壁に貼り出すことが名称の始まりとされる。ヨーロッパの都市、例えばフランスのパリなどでは、ポスター貼付(ちょうふ)用広告塔が設定されていて、街の景観づくりの役割を果たしている。日本では、公的な掲示としては、屋外ポスターの他、駅貼りポスター、車内吊(づ)り(中(なか)吊り)ポスター、額面ポスターなどの交通広告の場が、ポスターのおもな活用の場となっている。歴史的に有名なポスターとしては、フランスの画家のロートレックがモンマルトルのキャバレー、ムーランルージュ(赤い風車)のために描いたものや、日本では亀倉雄策が1964東京オリンピックのために描いたものがあり、一つの芸術作品と言える。ポスターは絵や写真、文字によるグラフィックデザインの重要な分野となっている。
ボディコピー(Body Copy)
広告コピーの中でメインとなるのは「キャッチコピー」で、見た人の心をつかむための短い文章となる。「ボディコピー」は、商品やサービスの詳細を紹介する文章のことで「本文」「本文コピー」と呼ばれることもある。キャッチコピーを見て興味を持ち、もっと詳しい情報が知りたいと思った人に読んでもらうための文章である。ボディコピーは、特に決まった形式はないが、貴金属など高額品はやや長めであっても、日用品や食品などのPOP広告にあっては、短い文章のものが見やすい。例えば、15字で行以内など、自店で方式を決めておいても良いだろう。漢字も少なくし、字体も読みやすさが肝心である。
丸筆、平筆、ポスターカラー
どちらも毛筆で、丸筆は穂先が丸く、平筆は穂先を平たくして幅を広くした筆。大きさから分けると「大筆(おおふで)」「中筆(ちゅうふで)」「小筆(こふで)(細筆(ほそふで))」となる。毛筆に使われる素材は兎、狸、鹿、羊、馬などの獣毛が一般的。毛筆の書体は、ソフトな和風の感覚で、個性的、温かい雰囲気があり、POP広告でも活用され、新鮮な印象を与える。最近は、書道の得意な人、不得手の人でもフリー書体で簡単に書け、特に決まった法則はないが、ただし、あまり癖の強い字体は、読みにくい。情報伝達の媒体であるPOP広告は、読みやすさが大切である。丸筆で太い書体を書く場合は、穂先が太く短い隈取筆などが効果的。平筆では穂幅を活かしてゴシック風の書体が書ける。顔料としてはポスターカラーや墨汁が使われ、マーカーが開発され普及するまでは、毛筆とポスターカラーが一般的であった。
明朝体
漢字や仮名に使われる装飾的な書体で、横線に対して縦線が太く、横線の右肩に三角形の山(ウロコ)があることが特徴である。止め、跳ね、払いが表現されており、筆で書いた文字が元になったデザインであるため、文章の場合は横書きよりも縦書きの方が読みやすい。
メインタイトル(Main Title)
もともとは、 映画・テレビで、作品の題名を示す字幕のことで、トップタイトルともいう。チラシや看板等の広告で、売り出し名やイベント名などの主題を大きく書かれた場合も、メインタイトルと呼ぶことがある。されに補って添えられる文言がサブタイトル。
メディアミックス(Media Mix)
複数のメディア(媒体)を組み合わせて展開する広告戦略をいう。性質の異なるメディアを組み合わせることで、互いに補って、相乗効果をもたらすとともに、統一性のイメージ訴求が期待できる。そうしてより多くの消費者にメッセージし、認知度を上げて、購入意向を喚起することが目的とされる。組み合わせるメディアとしては、POP広告、チラシ、DMから、ホームページ、SNS、LINE、その他のデジタル広告まで領域は広い。同様の意味で「ツールミックス」という言葉も使われている。
モビール (Mobile)
店内にあっても、静かに動いて空間の装飾になるとともに、シーリングPOP(Ceiling)として商品やキャンペーンを訴える役割を果たしてくれる。
ユニバーサルサービスPOP(Universal Service)
まず「ユニバーサルサービス」とは、本来は、国民生活に不可欠なサービスを、誰でも利用可能な料金と条件で、公平かつ安定的に提供することを言う。多くの国では電気、ガス、水道、鉄道、郵便、放送、通信、福祉や介護などを指し日本では通信、都市ガス、電気、水道、郵便などの事業で提供されている。
マーケティングにおける「ユニバーサルサービス」は、「ユニバーサルデザイン」のコンセプトをさらに進展させて、建物や商品のハード面ばかりでなく、特に、ソフト面の情報やサービスを提供していこうとするもの。提唱者である「(一般社団法人)公開経営指導協会」では、障害をもつ人ばかりでなく、より綿密なヒューマンコンタクトの対応により「すべての人(健常者の方も)に優しく思いやりのあるサービス」を根幹とし、「心のユニバーサルデザイン」としている。同協会の「ユニバーサルがわかる」パンフレットに、「・あらゆる人の立場にたって、公平な情報とサービスを提供すること、・年齢、性別、国籍、障害の有無にかかわらず、互いの違いを認め合い、尊重共生すること、・そのための配慮、気づき、心配り。」と標榜している。特に「配慮と気づきがユニバーサルのポイント」とし、“マインド+スキル”を駆使してサービスをと訴えている。
この主張を媒体としてアピールするのがユニバーサルPOPである。これまでに同様の意図で表示したものに「親切POP」また「サービスサイン」があるが、こうした便宜を図る掲示物があれば、来店客は安心して買い物ができ、店舗の信頼性も高めるものである。さらに、バリアフリーの手伝いを要する来店客には、当然の応対が必要。車いすの来客が入りやすく、移動しやすい店舗設備が必要とともに、店内では、不便さを感じさせない心配りや、メッセージのPOPが必要である。
ユニバーサルサービスPOP広告の表現としては、大きく見やすい文字を中心に、読みやすく、わかりやすく作成したい。カラーの配慮も大切。内容も売場の担当者のみに通用する専門用語は避け、平易な文案が肝心である。
余白(ホワイトスペース)
認知度の高い、いわゆる『良いPOP』と言われるPOP広告ほど余白がきちんと取れているのである。余白と文字のバランスによって商品への注目度が変わり、商品のイメージにも影響するのである。では余白とは?使用する用紙の一回り小さいサイズが文字などを書く制作スペースになる。従ってその周りが余白である。例えば「A4サイズ」の用紙に「B5」サイズの用紙を乗せて、空いたスペースが余白になる。これは絵画の額縁効果ともいわれ、いわゆる額や額装用マットが余白の役割をするのである。また、余白は外回りだけではなく、紙面中の空きスペースも余白ということもある。
レイアウト(Layout)
何をどこにどのように配置するかという割り付けのこと。POP広告では、紙面にいかに見やすく、読みやすく配置するかが重要であり、配置の仕方によって顧客への伝達効果は大きく変わってくる。
レタリング(Lettering)
本来は手で「文字をかく」という意味である。デザイン・広告業界においては、主に装飾やデザインを施された文字のことを指し、また、どんな書体を選択するか等の考え方を指す場合もある。POP広告においては、最も重要な役割を果たすのが「文字」であるため、特に、情報を伝える相手を意識して、文字を美しく、読みやすく表現する手法をレタリングという。
ロゴタイプ、ロゴマーク
ロゴタイプとは、社名、団体名、商標名、商品名などを表す文字(フォント)をデザイン化したもの、ロゴマークとは、消費者がブランドを識別するためのシンボルを指す。例えば「Google」(※1)はロゴタイプ、「Apple」(※2)のリンゴのシンボルマークは一般にロゴマークと呼ばれている。ただし、ロゴマークは和製英語。
ロゴタイプとロゴマークの例(Googleホームページより)
(※1)社名を表す文字をデザイン化した「Google」はロゴタイプ
(※2)ブランドを識別する「Apple」のリンゴのシンボルマークはロゴマーク
AIDMA(アイドマ)
Attention・アテンション(注意)、Interest・インタレスト(興味)、Desire・ディザイア(欲求)、Memory・メモリ(記憶)、Action・アクション(行動)の頭文字による用語。広告の原則として、POP広告の場合にもよく引用される。米国の学者 サミュエル・ローランド・ホールが、一世紀も昔の1920年代に提唱した「広告を見た消費者の購買行動のプロセス」を述べた法則である。今日の米国では「AIDA(アイーダ)」が一般的。店内にあっても、POPやディスプレイは購買客に「AIDMAの法則」と同じような働きをする。その場合、「記憶」を「Confidence・確信」に替えた「AIDCA(アイドカ)の法則」とされることがある。日本では「電通」が、1995年にWeb時代に応じた「AISAS(アイサス)」を提唱。「A・注意」「I・興味」「Search・検索」「A・行動」「Share・共有」の流れになっている。
DM(ダイレクトメール)
狙いとするターゲット宛てに紙媒体の郵便物や、あるいは電子メールを送って、プロモーションを行う手法である。広範囲に広告するチラシと違って、直接にターゲットの元へ情報が送られるので、販促ツールとして効果的・効率的と言える。ただし事前に、確実なターゲットの顧客情報を整備する必要があり、望まれないダイレクトメールはかえってターゲットの心証を損ねる可能性があるので、注意したい。その意味で、ふれあい感のあるセールスレターは、ターゲットの心をつかむことが出来る。