(一社)日本POPサミット協会会長 安達 昌人
一般社団法人日本POPサミット協会は、POP広告クリエイターを中核として、研究と現場実践で活動する組織です。
当協会は、1996年の創立以来、POP広告媒体と関連する技能を戦力として、売りの現場で、また広く公共の場で、さまざまなプロモーション活動を展開して今日に至っています。商品価値のPRや売り場活性化による成果達成という販売者目線で、また商品の最新情報の享受と適切な商品選びという消費者目線で、さらに広告担当者の人材育成という面で、当協会が果たしてきた実績はきわめて大きな手柄と自負しています。今後も、各界からの激励と支援を得て、いっそうの発展が期待できることは、まことに嬉しいかぎりです。
元来、POP広告とは、アメリカの広告業界(POPAI)によって創られたSPツールです。メーカーのマスコミ広告と連動して作成し、小売店頭に提供された宣伝媒体であり、そこに現物の商品があることで販売効果は著しく発揮されました。一方、当時、急速に台頭した海外の大型店・ディスカウンターでも、特価強調のオリジナルPOP広告が作成されています。
1960年代の半ばごろ、POP広告という用語が日本に紹介されるや、たちまち店頭に普及し、メーカーの販売店支援の広告物の提供から、小売店自身の作成する手描き広告まで、一大隆盛を極めました。その後、現場のPOP広告は、注視性高い表現技法から売れる文案作りまで、ビジュアルと情報の両面でさまざまなスキルが開発されて、売場活性化に貢献してきています。
しかし、時代の変遷を経て、何よりも大きな変革を見たのは、コンシュマーリズム(消費者の利益を優先させる理念)を基調とした、生活者に真に役立つインフォーマティブな広告作りの方針と姿勢です。消費者には知りたい要望があるとともに、販売者側にとっては、いかに知らせるかが重要な役目です。そのために購買者の意向を摂取するマーケティングがあり、満足される商品作りのマーチャンダイジングが基盤になります。POP広告を始め関連する活動~ディスプレーからあらゆる販売促進活動まで、そうした理念が反映されるべきであることは、言うまでもないでしょう。
POP広告は、販売者側にとっても消費者(顧客)側にとっても、欠くべからざる有意義な情報ツールであるといえます。
まさにそうした時代(1987年)にスタートしたPOP広告クリエイター(公開経営指導協会認定資格)は、文字通り「クリエーティビティー(企画力・創造力)」を主眼に構想された、時代を先取りしたライセンスです。企画性と創造性は広告作りの源泉です。
では、何を企画し創造するのか。まずは、売りの場を高揚させる催事の企画から、推奨する商品化計画、展示とPOP広告によるアピール、有用なハイクオリティの商品情報の提案、そして究極には、消費者が商品を使う喜び、楽しむ喜びの満足感をもクリエートしていきます。消費者の意向(ニーズ)を知って的確に対応するとともに、新しい消費者意向(ウォンツ)を創り出していくものです。
そのためには、当然、POP広告クリエイターは、その主張に適したより水準の高い表現技術を目指して研鑽に励み、「知らせる技術」を習得することは重要です。また、流通業界だけが活動分野ではなく、身につけた技能を活かし、地域社会の活動(例えば、子育て支援、食育、福祉、環境美化、ボランティア活動、などなど)に積極的に参加して貢献するともに、自身のキャパシティと活躍範囲を大きく広げていくことも今後の課題であり、一段と創造力を高めることがその役目である、と考えます。
このPOP広告クリエイターを中心に組織されている日本POPサミット協会も、同じ方向を目指しています。これまでも、企業の販売店支援、店頭のPOP広告・ディスプレー・その他の販売促進策や実習指導、公共機関・商店街・個店の教育や現場の診断、イベント計画などと広範囲に活動して来ましたが、さらに幅広い活動を展開していく計画です。POP広告という情報発信ツールを活かし、企業・売り場・商品と生活者をつなぐよきコミュニケーターとして活躍いたします。その基軸となるのは、先のクリエーティビティーのコンセプトであり感性です。常に新しい領域を開拓していくのが、私たちのビジョンといえます。
「今後、POP広告はどう変わるのだろう」ということが、よく話題になります。これは、大きな可能性を秘めています。よく知られた言葉の「不易流行」は、松尾芭蕉の提唱した俳諧理念ですが、「不易」は永遠に変わらないもの、「流行」は新奇を求めて時代とともに変化するものです。相反するように見える不易と流行は、実は根源は同じであると芭蕉は考えていました。
流行~変わるものといえば、1950年代後半頃よりパソコンの普及によって、今では売り場にはパソコン作成のPOP広告が多く見られます。しかし一方、手描きPOP広告も着実に引き継がれ、その一つのブラックボードも人気の高い媒体です。片や、デジタルサイネージ(電子看板)や喋るPOP広告類も活用されています。現状は、デジタル系と手描き系が並立し、ハード面・ソフト面の両輪の技術の進展によって、未来の売場の広告媒体は大きく変貌することが想像され、夢のある無限の可能性を秘めています。
不易~変わらないものは、POP広告の機能の本質です。先述した、顧客の知りたい情報を、正しく、わかりやすくメッセージするのが、POP広告の責務で、これはいつの時代にあっても同じです。かつて話題となった米国大統領のJ・F・ケネディの著名な「消費者の4つの権利宣言」(1962年)は、「消費者には安全である権利、知らされる権利、選択する権利、意見を反映させる権利がある」と宣言したもの。今も通用する文言であり、普遍です。
一般社団法人公開経営指導協会の提唱する、あらゆる人の立場にたって公平な情報とサービスを提供する「ユニバーサルサービス」運動は、安全である権利、知らされる権利が基本といえるでしょう。ユニバーサルサービスのPOP広告は、今後の私たちに課せられた大きなテーマといえます。
さらに、今日の購買の状況がまさに「選択の時代」といわれますが、では、消費者は何を選択するのか。買い物にあっては、店(売り場)を選び、商品を選び、人(販売員)を選び、店の方針を選んでいます。販売店の立場でいえば、いかに選ばれる店(売り場)、選ばれる商品、選ばれる販売員と、選ばれる販売姿勢であるかが肝要です。
そこで、販売の場に重要なポリシーは「4C」とされます。すなわち、「コミュニケーション(ふれあい)・コンビニエント(便宜を図る)・コンサルティング(適切なアドバイス提供)・コンフィデンス(信念・信頼)です。
もう一人の販売員といわれるPOP広告は、顧客の意向を反映して作成されるとともに、こうした店のイズムや販売姿勢を、大切な顧客に的確に理解しやすく、信念をもって伝えるメッセンジャーです。
そうした意味で、POP広告は今後、時代の要求に呼応してさまざまな意匠を見せるでしょうが、重要なのは、いつでも購買者の立場にあって、情報内容的により深く掘り下げられ、売り場の必須のコミュニケーション媒体として活動し続けることでしょう。
私たち日本POPサミット協会は、つねに先端にあって、それを推進する役目を果たしたいと願います。